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「文字のない世界で表現される、絵のみの絵本で養う感覚とは?」

絵本と聞くと文字と絵があるものを想像するかと思います。ほとんどがそうですし、きっと子供の時に親に読んでもらった絵本がそうでしょう。

けれども、ブルーノ・ムナーリの絵本は視覚情報の一部でもある文字が欠けています。アート作品として絵本も手がけている彼ですが、知育玩具としては作製していないのかもしれませんね。 今ブルーノ・ムナーリの絵本はアート以外の意図で見直されています。

それは感覚を養うための玩具としての役目です。 文字表現を排除した絵本でどんな感覚が養えるかデザイン思考していきましょう。

 

 

・ブルーノ・ムナーリの絵本はどんなもの?

ブルーノ・ムナーリ以外にも文字をなくした絵本はたくさんありますが、今回は彼の作品を個々に紹介します。

 

・「きりのなかのサーカス」

時代背景はイタリア・ミラノ。ページの一枚一枚が単色で描かれています。一枚めくるごとにその町を自分で移動しているような感覚にさせられます。バスに乗り、移動し続けるとサーカスに辿り着きます。それまではほとんどトレーシングペーパーのページに黒単色で描かれていたものが黒以外のカラフルな単色でサーカスを表現しています。ページごとに切り抜きが施されており、裏のページの絵と関連性があります。

例えば、前ページではダンベルを大男が担いでいますが、そのダンベルの両端重り部分は丸く切り抜かれています。その裏ページでは切り抜かれた部分は自転車の車輪として表現されています。

サーカスを見終わると森を抜けて霧が晴れます。最後の部分のトレーシングペーパーのページは終了です。 トレーシングペーパーを活用することで霧を表現しています。

 

・「木をかこう」

この作品に関しては買い手が付け足すことで作品を完成させるものです。「木をかこう」では木がどのような過程で、育つのかその過程を想像し考えながら書き足す作業を設けています。

この絵本は子供の観察力を養うためのものと言えそうです。 私たちは成長するに応じて見る視点が変わります。最近では外で遊ぶ機会が減ってしまったかもしれません。外での生物や植物の成長過程を直に観察する機会が減ったでしょう。

この絵本ではそういった自然現象の中でどのようなルールがあるのか身につける練習にもなるのです。

 

・文字がないことで何がわかるか?  何を考えるか?

日本人の大半は、ルールを遵守する人が多いものだと考えています。幼少期は保育園または幼稚園に入る。卒園すれば小学校に入学、6年通えば卒業し、中学に入学。そして中学を3年通うと卒業し、高校に進学。それぞれ大学や専門学校に行くか就職をする。ルール社会、社会のルールを学ぶ機会はあっても自然現象や先のことを想像する能力は養う機会がほとんどなくなっています。

先に生まれたものが経験則やその先に生きた人の敷いたレールの上を皆が走る。そこから脱線してしまうとまた元のレールに戻ることが困難になる。日本独自のルールですね。 文字や言葉で常識は教えられても、働くことに直結しない知識は除外された教育が発展してきてしまっています。リスクヘッジ能力の高すぎる日本人だからこそ招いた結果かもしれません。

どのような生き方をするか、決められないアダルトチルドレンも増えてきています。

ブルーノ・ムナーリにはそういった社会のルールはありません。想像を豊かにさせるエッセンスが詰まっています。

 

・子供にどんな感覚を身につけて欲しいか

木は土に根を張って、水分や栄養を吸収します。それをエネルギーとして幹を伸ばし、枝となり、そして枝には葉がつきます。植物の成長を感覚で身につける機会をブルーノ・ムナーリの絵本では与えてくれます。

先を読む予知能力、物事を観察する観察力。自分の目で見て感じたものを直感として定着させることで様々なシチュエーションに対しての適応力が身につきます。

物事に対して疑問を持つことで、自らの感覚を養ってくれる、そういった作品となっています。

 

・想像の欠如は未来の創造の欠如を招く

ありえないことが現実に形となって現れているのが現代です。

目に見える情報だけを呑みにしてしまうことで、人は想像力も創造力も欠如してしまいます。

些細な物事に関心を向け、どういったものを生み出すことができるか考える。

ブルーノ・ムナーリの絵本の世界は、子供たちの想像力を高める力があるのです。

 

 

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