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経営手法の一つとしてのデザインマネジメント ― デザインの原義から考える
経営とデザインマネジメント
ありとあらゆるモノが溢れる今の日本において、企業経営には革新、すなわち変化が求められています。変化のきっかけとなる力がアイディアであり、デザインはこのアイディアを生み出し、具現化し、実際に動かしていく手法の一つだと考えます。
溢れているのはモノだけではなく、言葉も同様です。数ある外来語と同じように、デザインという言葉もまた、本来の意義を置き去りにして一人歩きしてしまっているように思えてなりません。今回はデザインという言葉を見直して、とっつきにくさを取り払い、デザイン思考が企業経営にもたらす影響について改めて考えたいと思います。
◯デザインの定義
デザインと聞くと、大抵の場合は色や柄、形状などアーティスティックなものを思い浮かべると思います。しかしながら、インダストリアルデザインやエクステリアデザインなど、他の外来語と結びついて、いかにも専門性の高い小難しい響きになってしまうのはデザインもつ意味の一側面に過ぎません。
まず、デザインという言葉を辞書(*注1)で引いてみると、
①下絵、素描、図案。
②意匠計画。生活に必要な製品を製作するにあたり、その材質・機能および美的造形性などの諸要素と、技術・生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画。
となっています。
つまり、色や柄、アートに関連する作品としてのデザインは狭義の意味であり、デザインの本質は「意匠計画」にあります。意匠の諸要素と生産消費に関わる技術的な方面からの要求を検討・調整する「総合的な造形計画」。これがデザインの広義の意味です。
デザインの語源はラテン語のDesignareです。これはde+signであり、deはout ofやfromなどの意味、signは記号です。記号学的に言えば、signとは世の中にある特定の意味を内包するもので、絵やシンボルに限らず、言葉やジェスチャーなども記号なのです。つまり、本来のデザインは語源から言って人間社会におけるあらゆる意味を明確に示すことで、色や柄で飾ることやシンボルで目を引くことはデザインの手段の一つで目的のための二次的な行為であると言えるでしょう。
*注1:広辞苑第五版
◯デザイン思考で拓く経営
繰り返しになりますが、現代はモノもサービスも溢れている時代です。供給量が需要を上回っている中で、新たなプロジェクトを立ち上げるにはかなりのリスクが伴います。しかし、そこに確かな計画と設計があれば、リスクは自ずと軽減されます。
そのような確かな道筋には一貫したコンセプトが必要になってくるものですから、多くの米国企業でデザイナーが重要視されているのも頷ける話です。
日本ではまだデザイナーは絵を描く仕事だという認識が一般的ですが、米国では随分と前からビジネス全体の行程に関わる職業と位置付けられ、ターゲット層の想定や売り方、値段の設定などプロジェクトのコンセプトを司っています。そうしてプロセスに一貫性を持たせることでブレない価値を持ったプロダクトを生み出していくのです。論理や合理性に立った機能性の充実のみには最早消費者は満足しません。使い心地の良さやこだわりという、より感覚的な視点を合わせ持ち、尚且つ両方のバランスを「デザイン」することが求められています。
デザイン シンキング(デザイン思考)プロセス
良いアイディアを支え導く計画と設計、その一連のプロセスがデザインの元来の意味であることは前項で述べた通りです。今後、経営においてデザインがますます重みを増していくでしょう。日本ではデザイナーたちの意識も勿論のこと、ビジネスに関わる全ての人たちの意識の変革によって、マーケットの地図も新たな広がりを見せるでしょう。
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2017年 4月 06日
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