ビジネスにデザインの波を起こす、戦略的デザインマネジメントの力！

前回までに、デザイン マネジメント、デザイン思考（デザインシンキング）、そしてイノベーションについて考えてきました。

今回は、「戦略的デザインマネジメント」について取り上げます。

「戦略的デザインマネジメント」とは、「デザインマネジメント」との違いを説明するために、従来の「デザインマネジメント」について紹介する必要があります。

まず最初に、現在注目されている経営手法である「デザインマネジメント」は、一般的に「戦略的デザインマネジメント」を指していることが多いです。

では、順を追って説明していきましょう。

初期の「デザイン マネジメント」では、デザインをマネジメントすることを目指していました。つまり、「デザイン マネジメント」とは、クライアントや企業からの依頼を受け、デザイナーたちのプロセスを管理し、クライアントの求める理想に近い成果物を生み出すために調整することを指します。

この定義の背景には、デザイナーと経営者という異なる存在の間に、相互理解が難しいという事実があります。

純粋な美術系のデザイナーは、会社経営に関する分野に苦手意識を持つ傾向があります。彼らは一種の職人気質で、素晴らしい作品を生み出すことに情熱を注ぐ一方で、財務に関連する問題にはあまり関心を持たない人も少なくありません。

一方、経営者側の中にはデザインに対して苦手意識を抱く人々が多く存在します。その理由として、デザインは感性の領域であり、金銭的な評価が難しいという点が挙げられます。どのデザイナーが優れているかは、製品を市場に出してその結果を見なければ判断できません。財務管理の手法では評価しにくいのです。

このような状況では、イノベーションをはじめとする通常の製品開発すら困難となります。

ここで登場するのが、「デザインマネジメント」です。デザインマネジメントの目的は、お互いを理解し合えないデザイナーと経営者のコミュニケーションを円滑化し、架け橋となることです。

では、「戦略的デザイン マネジメント」とは何でしょうか。

簡単に言えば、最低限のデザインマネジメントにとどまらず、デザイン部門やデザイナーとの密接な連携を通じて、企業の戦略の核としてデザインマネジメントを取り入れることです。

そのためには、デザインを評価できる経営者、つまりデザイン思考を持つ経営者が必要不可欠です。

そのため、デザイン思考（デザインシンキング）の重要性が浮き彫りになるのです。

「戦略的デザインマネジメントの導入」を実践した経営者たち

デザイン経営戦略の導入を実践した経営者たちの具体的な取り組みについてご紹介します。

example.1
ユーザーエクスペリエンスの重視
成功した経営者たちは、ユーザーの体験を最優先に考えました。製品やサービスのデザインにおいて、使いやすさや感動を追求し、顧客満足度の向上を図りました。ユーザーのニーズや要求を理解し、その要素をデザインに反映させることで、顧客との強い絆を築きました。

例えば、アップルのスティーブ・ジョブズは、iPodやiPhoneなどの製品において、シンプルで直感的な操作性を重視しました。ユーザーがストレスなく使いこなせることを追求し、ユーザーエクスペリエンスの向上に成功しました。

example.2
ブランドアイデンティティの確立
デザイン経営を実践した経営者たちは、デザインを通じて独自のブランドアイデンティティを築き上げました。彼らはデザインをブランドの核とし、視覚的な魅力やユニークな要素を活用してブランド価値を高めました。

例えば、ソニーの盛田昭夫氏は、ソニー製品のデザインにおいて洗練された美しさと先進性を追求しました。ソニー製品が高品質であり、ユーザーにとって魅力的な存在であることを視覚的に表現し、ブランドイメージを確立しました。

example.3
クロスフィールドの活用
成功した経営者たちは、デザイナーと経営者の協力関係を築き、クロスフィールドのチームを形成しました。異なる専門分野の人々が協力し、創造性と革新を促進するための環境を整えました。

この協力関係により、デザイナーと経営者はお互いの視点や専門知識を活かしながら、デザインの戦略的な取り組みを推進しました。デザイナーのクリエイティビティと経営者のビジネスの視点が融合し、優れた製品やサービスの開発につながりました。

example.4
イノベーションの追求
デザイン経営を実践した経営者たちは、デザインを通じたイノベーションを重視しました。市場のニーズやトレンドを先読みし、デザインによる新たな価値創造を追求しました。

彼らは従来の枠組みにとらわれず、積極的な挑戦を行いました。新しい技術やデザインのアイデアを取り入れ、業界をリードする革新的な製品やサービスを生み出しました。このようなイノベーションによって、市場での競争力を強化し、成功を収めることができました。

デザイン経営がビジネスを革新する
デザイン経営の実践は、経営者たちが競争力のある製品やサービスを提供し、市場で成功を収めるための重要な要素であることが、彼らの事例から明らかになっています。デザイン思考と戦略的デザインマネジメントは、企業の成長と競争力強化において不可欠です。

デザイン経営は、ユーザーの体験を最優先に考え、使いやすさや感動を追求することによって顧客満足度を向上させます。また、デザインを通じて独自のブランドアイデンティティを確立し、視覚的な魅力やユニークな要素を活用してブランド価値を高めることができます。さらに、デザイナーと経営者の協力関係を構築し、異なる専門分野の人々が協力するクロスフィールドのチームを形成することで、創造性と革新を促進します。さらに、デザインを通じたイノベーションの追求によって、企業は市場のニーズやトレンドを先読みし、新たな価値を生み出すことができます。

以上のようなデザイン経営の実践により、企業は競争力のある製品やサービスを提供し、市場で成功を収めることができます。デザイン思考と戦略的デザインマネジメントは、企業の成長と競争力強化において不可欠な要素として位置づけられています。