記事の詳細
高度なデザイン人材による「IDEO」のデザイン思考:クリエイティビティを引き出す環境
発想する会社 IDEOの魅力
今回は、何度か登場している「IDEO」について、デザインマネジメントについて考えてみましょう。
まず、「IDEO」という会社がどのような仕事をしているのかご紹介します。
「IDEO」は、アメリカ合衆国カリフォルニア州に拠点を置くデザインコンサルタント会社であり、「世界で最もイノベーティブな企業」と言われています。彼らは企業や社員が抱える課題に対し、デザイン思考(デザインシンキング)の力を駆使して解決策や新たなビジネスを提供しています。
同じくアメリカで有名なマッキンゼーもコンサルティング会社で同様の仕事をしているとよく言われますが、大きな違いがあります。
それは、「IDEO」がデザイン会社であるという点です。彼らの社員はデザイン思考を持ち、それぞれの視点から新しい解決案を提供しています。
デザインマネジメントの研究は、マーケティングの研究よりもまだ新しい領域です。そのため、デザインマネジメントにおける正解はありません。(もちろんマーケティングにも正解はありませんが、手法はいくつか確立しています。)
そこで、「IDEO」の会社のあり方から、デザインマネジメントに繋がりそうな要素に視点を置いてみましょう。
まず、「IDEO」の特徴として、明確なルールを設けないことを大切にしています。
出社時間や帰宅時間は自由です。服装も自由で、働く場所も特に決められていません。クライアントとの打ち合わせの時間や、失礼のない服装など、最低限のルールは存在しますが、それ以外は基本的に自由です。
さらに興味深いのは、できるだけ社員同士の上下関係によって縛られないようにしていることです。例えば、上下関係の厳しい企業では、部下は上司のミスに対して口を挟むことができず、逆に上司に媚びを売ることで自身の立場を守
ることができるかもしれませんが、「IDEO」は上下関係に基づくヒエラルキーをできるだけ排除しようとしています。
では、どのようにして「IDEO」は社員をコントロールしているのでしょうか。
それは、同僚との刺激と競争の中で日々成長しているため、お互いが尊敬し合い、自己を律することに繋がっています。
彼らはコントロールすることをやめて、社員を信頼しているのですね。
これらの仕組みが成立するのは、「IDEO」のように優秀な人材が集まるからなのか?という疑問が生じます。
では、デザイン思考(デザインシンキング)を持った人々が好む組織とはどのようなものでしょうか?
デザイン思考(デザインシンキング)を持った人が好む組織とは!?
以前、デザインマネジメント専門のブログでも紹介しましたが、アメリカの都市社会学者であるリチャード・フロリダは、クリエイティブクラス(デザイン思考・デザインシンキングを持った人々を含む)がどのような組織を好むのかを豊富な調査からまとめています。
その結果、何よりも「3つのT」が重要であると結論付けています。
「3つのT」とは、「talent」(才能)、 「technology」(技術)、 「tolerance」(寛容性)の頭文字を取ったものです。
「talent」(才能)は、優れた人材がさらに優れた人材を引き寄せ、自身より優れた人から多くのことを学びたいという考えを持っています。
「technology」(技術)は、新しい技術やノウハウに対してお金を払ってでも学びたいと思っています。このような刺激的な経験そのものが貴重な資産となります。
最後に「tolerance」(寛容性)ですが、デザイン思考を持つ人々にとって最も重要な要素だと考えられます。
デザイン思考を持つ人々は、一般的には少数派であり、マイノリティとなる傾向があります。そのため、同僚や会社が自身の存在を認めることが重要視されることが多いです。
実際、デザインに関連する仕事は、感性に頼る側面が多く、厳密に9時から18時まで机の前で考えるだけでは優れたアイデアは生まれません。
デザイン思考(デザインシンキング)による「クリエイティビティ」の重視と、新たな価値の創造
自由な服装、自由な時間、自由な働き方の環境は、感性を刺激し、創造性を引き出す役割を果たします。特に高度なデザイン人材は、このような自由な環境において、革新的なクリエイティビティを発揮し、新しい価値の芽生えを促します。
デザインマネジメントにおいて最も重要なことは、デザイン思考(デザインシンキング)を持つ高度なデザイン人材を理解し、彼らが最も能力を発揮できる環境を整えることです。組織は、柔軟で包括的なアプローチを取りながら、彼らの創造力とクリエイティビティを最大限に引き出す努力を行う必要があります。このような環境が整えられることで、新たな価値の創造が可能となります。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。